【 後悔しないための家づくり知識 】
~ 断熱性能についてと、その見方編 その① ~
最初に何を書いていこうと考えた時に、やはり昨今一番耳にするようになった“高断熱”についてだろうと思いこのテーマにしました。
大前提の基礎知識として、断熱性能を表す指標として、日本ではUa値やQ値というものが一般的に使われており、ここ数年ではUa値という値がメインに使われています。
このUa値は数字が小さければ小さいほど良い値となります。
この事を踏まえて話を進めていきます。
最初に言っときます。
今日一番大切な肝となる事!
【入れる断熱材の厚み(D)】÷【熱伝導率(λ)】=【熱抵抗値(R)】
【熱抵抗値(R)】の数字が大きければ大きいほど断熱性能が優れている
1÷【熱抵抗値(R)】=【熱貫流率(U)】
【熱貫流率(U)】の数字が小さければ小さいほど断熱性能が優れている
これを覚えてください。
では、家づくりを始めるにあたって知っておいた方が良い断熱性能について、順を追って話していきたいと思います。
ここ数年を振り返ってみても、全国で新築住宅を建てられた方の『住みだしてから後悔したこと』の上位1位~3位には必ずと言っていいほど『新築なのに暑い寒い』や『もっと断熱気密にこだわっておけば良かった』が上がってきています。
また、上位には常に『光熱費が高い』というキーワードも目にし、省エネへの要求要望が高まってきています。(参考文献:新建ハウジング2015~2021)
これらの背景の他に、かなり遅すぎるのですが国の省エネ義務化(2025年から。2021年からは説明義務化が始まっています。)や2030年・2050年に向けての更なる省エネ化促進計画の予定が表に出だした事、少しずつではありますが地球環境保全に向けて取り組むべき方向性が広がりつつある事、SDG’s、カーボンニュートラルの考えが広がってきた事が相まって、高気密高断熱を求めるお施主様が増えてきています。
『じゃあどれくらいの断熱性能があれば高断熱なの?』
『どれくらい断熱すれば暑くない寒くないになるの?』
『ZEH(ゼッチ)を満たせておけば良いの?』
『どのハウスメーカーやビルダーの断熱仕様が良いの?』
『どの断熱材が良いの?』
などなど、色々な質問を受けることが多々増えてきました。
それぞれの質問に対しての内容を短く簡単に説明するのは難しいのですが、許す限り端的に答えていくと、
『どれくらいの断熱性能があれば高断熱なの?』
⇒高断熱の定義はありませんが、快適性を保つための目安、冷暖房費を極端に落とす目安(無暖房を実現するための目安も)、健康を害さないための目安、構造躯体を傷めない耐久性を上げるための目安等があり、またその逆でこの断熱性だけだと足りていないという指標はあります。
『どれくらい断熱すれば暑くない寒くないになるの?』
⇒冷暖房費を無視してガンガン光熱費が上がっても良いのであれば、現在の国で定めている基準の最高位である断熱等級4(H28年省エネ基準)(福岡でUa値0.87)やZEH基準(福岡でUa値0.6)でもある程度涼しく、温かくなります。
ただ、新築するということは大半の方が今住んでいる賃貸よりも床面積・屋内の体積が1.5~2倍程度に増えるので、賃貸の時よりも高い冷暖房負荷となり、高い光熱費を払うことになります。
断熱等級4(福岡でUa値0.87)よりもZEH基準(福岡でUa値0.6)の方がマシになりますし、ZEH基準よりもHEAT20G1グレード(福岡でUa値0.56)の方がマシになりますし、HEAT20G1よりもHEAT20G2グレード(福岡でUa値0.46)の方がマシになりますし、HEAT20G2よりもHEAT20G3グレード(福岡でUa値0.26)の方がマシになります。
更に上を向けばパッシブハウス認定基準というものもあります。(無暖房レベル)
それぞれにおおよそこれくらいの断熱性を持たせば屋内の最低室温がこれくらいになるという目安・指標はあります。(下記URL参照:一般社団法人HEAT20)
あとは予算やご要望、優先順位もありますので、それぞれの性能でのメリットデメリットを知り、光熱費シュミレーション等にて違いを見ながら決めていく事をお勧めします。
http://www.heat20.jp/grade/index.html
※サイトの平成28年が断熱等級4。福岡は6地域になります。ZEH基準は平成28年とG1の間にあたります。
また、単純な性能値だけではなく、周辺環境や外構等を含めたパッシブデザイン(パッシブ設計)をするかどうかにも大きく影響を受けます。
各方位にどういった窓をどの高さでどれくらい付けるか、日射遮蔽や日射取得をどう考えた設計をするかなど、一つ一つの要素の違いで、同じUa値でも全然違った住環境になります。
例えば、掃出し窓1個分で入ってくる太陽の熱はコタツ1個分と同等になってきます。
冬場は助かりますが、暑い時期は最悪です。
これから更に悪化をたどっていくとされるこの猛暑の中でコタツがついていると考えただけでもぞっとします。
それを避けるためには、ひさしを付ける、軒深にする(屋根がかかる)、外付けブラインドをする等の対処法を考えた設計になっているかが重要です。
また、夏場の東西の窓もやたら多く付けたり大きく付けたりすると夏場は地獄です。
また、気密性(家に見えない隙間がどれだけあるか)が悪いといくら断熱しても冬はダダ漏れ、今時期だと外の暑い空気と湿気がダダ入りしてきて意味がなくなる事にも注意です。
(物理の原理原則として、熱は高い方から低い方へと移動します。気密性については別ブログにて話します。)
『ZEH(ゼッチ)を満たせておけば良いの?』
昨今よく聞くようになったZEHですが、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。
(国土交通省サイトより。以下URL参照)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000153.html
ですが、ZEHはあくまで『空調』『換気』『照明』『給湯』に係る消費電力のみを加味した計算であって、その他の電力(冷蔵庫、電子レンジ、TV等の家電やパソコン、充電など諸々の消費電力)は無視したものとなっています。(きちんと芯から理解してZEHやBELS申請をしている業者であれば分かります)
また、前述したように断熱性と気密性は大きく相関関係にあるため、断熱だけしてもあまり意味が無くなるのに、このZEH基準は気密性の規定がありません。
故に、ZEHは時々ZEH=電気代がかからないと誤った捉え方をしている人(業者も)をよく見かけますが、まったくの間違いで、余裕で電気代がかかってしまうという事態が起こります。
弊社セカンドオピニオンもやっており、数名の方がZEHで新築したにもかかわらず電気代がかかるとご相談されましたが、上記の通りなのです。
また、前述した通り、健康的で快適性を求めた時には、ZEH基準を満たしたとしても十分な温熱環境(暑い寒いを感じない省エネ住宅)には程遠いレベルと言えます。
『どのハウスメーカーやビルダーの断熱仕様が良いの?』
正直各社それぞれの考え方や理念があり、また前述した通り建てられる方々の優先順位やご要望もあるので、一概にどこが良いどこが悪いとは言えません。
『暑くない寒くない』
『ヒートショックや健康被害に遭わない』
『家の耐久性を上げたい』
『内部結露リスクを抑えたい』
『窓辺の結露を無くしたい』
『冷暖房費やその他家にかかる電力を極力抑えたい、または無暖房を目指したい』
『維持メンテナンス費用、ランニングコストを極力減らしたい』
『環境保全に徹したい、SDG’sを意識したい』
などなどのご要望が上位にあれば、差別化は出来ます。
お勧めはUa値は0.2~0.3前後を目指す事です。
『どの断熱材が良いの?』
今回のメインのお話といってもいいのですが、大きく4つの観点で見ることが大切です。
(1) 単純な断熱性の良し悪し(暑くない寒くないに直結する.別称、外皮性能)
(2) 透湿抵抗値の良し悪し(内部結露に直結するファクター)
(3) 施工リスク(施工方法、経験よって、季節の温度湿度によって、人為的ミス)
(4) コスト(単純な価格の違い)
以上を加味して選定する事が大切ですが、これもやはりそれぞれの会社で選定する物であり、また、その会社のその説明で建てられる方々が納得して信頼できるかが重要かと思います。
ただ、良い事だけという物はどれにもありません。
必ずそれぞれにメリットデメリットがあります。
それぞれの会社に詳しく選定している根拠が何かを聞いてみてください。
その他に気を付けたいこととしては、どの断熱材でも極力内部結露等のリスクを減らす為の正しい施工方法があります。
それが出来てないように見えるとこも時々ネット上で見かけるので注意が必要です。
また、結露計算をやっているかどうかも確認する事をお勧めすます。
あと、これが一番話したかったのですが、
「〇〇の断熱材を使っているから断熱性能が良い」
「〇〇のメーカーだから断熱性能が良い」
「熱伝導率が〇〇だから断熱性能が良い」
「〇〇断熱工法だから断熱性能が良い」
等の言葉を時々ネット上で見かけます。
ですが、その言い方は完全に間違いで、誰でも簡単にそれぞれの会社の断熱性能の優劣を判断する方法があり、次の式によって決まります。
① 【入れる断熱材の厚み(D)】÷【熱伝導率(λ)】=【熱抵抗値(R)】
この、【熱抵抗値(R)】が大きければ大きいほど断熱性能が優れていると言って良いです。
高断熱を求めるのであれば、お勧めとしてはR値3.5以上、出来れば4.0以上を目指す方が良いです。
また、R値の逆数はその数字が小さければ小さいほど熱を通しにくいという物性値であり、
② 1÷【熱抵抗値(R)】=【熱貫流率(U)】
【熱貫流率(U)】と言います。
窓や玄関ドア関係のカタログにはこの熱貫流率が書かれていますので、カタログを見て数値が小さい物を極力選ぶことによって断熱性能は高まります。
高断熱を求めるのであれば、お勧めとしてはU値1.5以下、極力1.0以下を目指す方が良いです。
➁はまた別の機会で詳しく話すとして、今回は①の式だけは最低限覚えておいてください。
「使っている断熱材の厚みは何mmですか?」
「その断熱材の熱伝導率(λ値)はいくらですか?」
とだけ聞いて、単純な厚み割る熱伝導率をして大きな数字の方が断熱性能が高いと思ってください。
もちろん、断熱性能は窓や玄関ドアも大きな影響を及ぼすので、余力があれば
「窓とか玄関ドアの熱貫流率(U値)はいくらですか?」
と聞いて、小さな値であればあるほど断熱性が高いです。
λ値、U値を即答出来なかったり曖昧な返事であれば論外です。
ただ、前述した通り断熱性能(外皮性能)を高くする事は快適で省エネで光熱費を極力減らす暮らしを求めるのであれば最低限必要な項目ですが、それ以外の日射取得・日射遮蔽・パッシブ要素を考えられていないと、想像とは違った、思った物とはかけ離れた家づくりになってしまうので、要注意です。
これらについてもまた追々出来るだけ詳しくブログに書いていきたいと思います。
という訳で、今回の断熱性能についてとその見方については以上です。
これでもかなり省略しながらの話となったので、後々少しづつその②その③...と続けていきたいと思います。
早くその先が知りたい方、またはご質問等ある方は、どうぞいつでもご連絡ください。
また、この他の家づくり全般に関する大切な話を2時間で網羅する、
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ではまた次回、
~ 断熱性能についてと、その見方編 その② ~
を楽しみにしていてください!m(_ _)m
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